【読書感想】『塞王の楯』え、何これめっちゃオモシロイ!?

今日は今村翔吾さん著の小説『塞王の楯』を読み終えた感想を書こうと思うんですが、先にお伝えしますとぼく、時代小説で初めて感動して泣いてしまいました。

大まかなお話については、帯に書かれていたあらすじが全てを説明してくれているので、引用させていただきます。

 

幼い頃、落城によって家族を喪った石工の匡介(きょうすけ)。
彼は「絶対に破られない石垣」を作れば、世から戦を無くせると考えていた。
一方、戦で父を喪った鉄砲職人の彦九郎(げんくろう)は「どんな城も落とす砲」で人を殺し、その恐怖を天下に知らしめれば、戦をする者はいなくなると考えていた。
秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、匡介は京極高次に琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。
攻め手の石田三成は、彦九郎に鉄砲作りを依頼した。
大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、信念をかけた職人の対決が幕を開ける。

 

これ、公式HPにも書かれていました。

大まかな内容は上記の通りなのですが、この小説、構成がずるいんです。

あ、「ずるい」って褒め言葉ですよ?

実は、上記のあらすじは物語後半のお話なんです。

石工の匡介と鉄砲職人の彦久郎が激突するのなんて、物語のラストの山場なのですが、そこまでのページ全てを使って、その山場が最高に盛り上がるシチュエーションを積み上げていくんですよ。

まさに、匡介が石垣を積んでいくかのように!

以下、あらすじ紹介程度うのネタバレがあります。

物語冒頭、匡介はまだ小さな子どもなんんです。

時代は織田信長が天下統一に向けて奔走してた時代で、戦乱に巻き込まれた匡介は家族と生き別れになるんです。

「生き別れ」と書いたのは、目の前で家族が死ぬシーンは描かれないものの「これは絶対助かってない」って別れ方をしてしまうんですね。

特に、匡介が最後に見た妹の姿は、後々まで匡介にとってトラウマになる悲惨なもので、冒頭のシーンはかなり読んでてしんどいです。

そんな生き地獄の中を落ち延びた匡介は、穴太衆という石工の集団・飛田家のお頭である「源斎」と出逢います。

穴太衆というのは戦国時代は白の石垣を組むことを生業としていて、強固な石垣は城を守る楯として重要視されていて、中でも飛田屋の仕事は秀逸だったため、頭の源斎は「塞王」と呼ばれていました。

匡介はそんな源斎に石工としての才能を見出され、子のいない源斎は「こいつをおれの跡取りにする」と宣言するのでした。

というところから始まり、前半は源斎のもとで修行に明け暮れる匡介の姿が描かれます。

その中で、信頼できる仲間との絆の話が語られたり、宿命のライバルとなる彦九郎の話が語られたり、ラストの戦場となる大津城と匡介との縁の話が語られたりするんです。

大津城の城主である「京極高次」がまたズルいキャラなんですよ。

高次様についてちょっと触れたいのですが、もう読むつもりの方はここまでにしておいてください。

いいですか?

高次は、自身の戦での武功ではなく政略結婚などの縁組をうまく使ってのし上がっていった、親の七光りならぬ親戚の七光りの「蛍大名」と揶揄される人物、というのが定説のようです。

ですが、この物語の中での高次は、見知った人間が死ぬことが耐えられない心優しい人物で、家臣や領民が死なずに済むのであればどんな汚名も喜んで被り、誰にでも媚びへつらう殿様として描かれるんです。

家臣や領民にも偉ぶることのない高次はみんなに愛されていて、そんな高次に「攻められても絶対に落ちない皆が安心できる城にしてほしい」と依頼され、匡介も、持てる力全てを注いで石垣を補強するんですが、そのシーンがまた良いんです。

そんな大津城が、宿敵との戦いの舞台となるんです。

熱い、ひたすらに熱い戦いの物語です。

その攻防の中で繰り広げられる人間ドラマに、ぼくは思わず涙を流してしまったのです。

…と、ここまでにしましょう。

ぜひ読んでいただきたいっす!

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