【読書感想】『N』紙媒体の小説の秘めたポテンシャル

今日は道尾秀介さん著の小説『N』を読んだ感想を書きます。

本の構造が面白い小説で、以下ネタバレなしで書きます。

繰り返しますが、本の構造がめっちゃ面白いです。

全六章の短編ミステリなのですが「どの話から読んでもいいです」と冒頭で断られるんですね。

その後、各章の1ページ目だけが抜き出されて紹介され「気になった話から読んでください」とその物語が始まるページが明記されます。

さらにここで驚きなのが、各章が独立していることを際立たせるために、章ごとに本の上下が逆転してるんです。

つまり、約半分のページの文字が上下逆さまに印刷されているという不思議な本なんです。

それだけ物語を物理的に独立させておきながら、実は各章はゆるく繋がっていて「コッチの章のこのキャラは、実はあっちの章のそのキャラでした。」みたいな構造で、各章の読む順番で、大きな物語のネタバレの順番が変わり、手に取った人ごとにこの本の印象が変わるという、そういう仕掛けが施された小説でした。

ぼくは勝手に「これは電子書籍がこれだけ普及した世の中で、紙の本を買う新しい意味を考えさせる本だな!」と思いました。

各章ごとに本を180度回転させながら読む作業は、電子書籍だとちょっと面倒です。

そして、この小説の1番の楽しみ方は、違う順番で読んだ人と感想を述べ合うことで、それは「本を貸す」って行為が1番手っ取り早いはずです。

これは面白い本だなぁって思いました。