今日は軽く読めて、それでいて心にじんと来る小説のお話をしようと思います。
辻村深月さん著の『家族シアター』です。
7種類の家族にまつわる短編
この本は、短編集でした。
帯に書かれてあったものを引用させていただきます。
こんな人たちが登場します↓
同じ中学校に通う、真面目な姉とイケてる妹。
バンギャの姉(23)とアイドルオタクの弟(19)。
大学受験を控えた優等生の娘と、心配性な母親。
教師に憧れる六年生の息子と、大学准教授の父親。
宇宙を愛する妹と、自分の普通さがコンプレックスな姉。
息子家族と一緒に暮らすことになった、おじいちゃん。
赤ちゃんを連れて帰省する、藤子・F・不二雄を敬愛する若い夫婦
どうですか?ちょっと気になりませんか?
一悶着起きそうな組み合わせばかりじゃないですか?
無理やり大きく括ってしまえば、どの物語も、それぞれの家族の中でちょっと事件が起きて、その事件をきっかけに家族の絆がより深まるという構成なんです。
ぼくは特に大学准教授のお父さんの話が好きでした。
少しだけ、あらすじ紹介程度のネタバレをしますね。
このお父さん、文学部の、あまり昇進を考えていない准教授さんでして、仕事以外の時間は自分の好きな本を読む時間に全振りしたい人なんですね。
それがたまたま縁あって結婚し、長男を授かったら本を読む時間がどんどん削られていき「父親になるとこんなに自分の時間が無くなるのか」と驚愕し、子どもに関するいろんな行事が面倒臭くて仕方ないというお父さんなんです。
そんな中、息子は小学校の担任の先生に憧れ、自分も教師になりたいというようになるのですが、お父さんが息子のためにとった意外な行動とは!?
というお話なのですが、ぼくは大学准教授ではありませんが、とても他人とは思えない親近感を抱いてしまいました。
ぼくも、どちらかというと時間はなるべく絵を描くために使いたい!
「ご趣味は?」と聞かれて「子どもと遊ぶことです!」と屈託無く答えるお父さんを見ると、眩しすぎて塵になってしまいそうです…!!
家族って難しい
これを読んでつくづく思うのが「家族って難しいな」ってことです。
ドライな極論を言えば、自分以外は他人じゃないですか。
しかし「血が繋がってる」という事実は、いろんなバイアスをかけてしまいます。
一人ひとり、考えてることは違うはずなのについ同じような気がしてしまう。
意思疎通ができるような気がしてしまうのに、できないから腹が立ってしまう。
「絆」と「拘束」は紙一重なのについそのことを忘れてしまう。
感動できるエピソードが続くのに、そんなことをあれこれと考えさせられる不思議な小説でした。
本当に感動します
ぼく、短編集って実はあんまり読まないんですね。
「お!いい感じに盛り上がってきた!!」ってところで話が終わっちゃうことが多くて、ちょっと物足りなく感じてしまうことが多いんです。
どちらかというと、本一冊1つのエピソードの長編小説の方が好きです。
でも「最近ちょっと疲れ気味だから軽めの物語が読みたいな」なんて時があって、そんな時に短編集とか読むんですが、この小説は、すごいです。
短編なのに、1つ1つの物語がしっかりと感動させてくれるんです。
少ないページ数でどっぷり物語に浸からせ、感情移入させ、あれこれ考えさせるなんて「辻村深月さんすごいな!」ってなんども思いながら読みました。
辻村深月さんと言えば、ぼくは「ハケンアニメ!」って小説が好きです。
あ、『東京會舘とわたし』も面白かったなぁ〜。